議論のきっかけに座談会開催 福井・勝山市農業委員会

荒土地区の座談会はワークショップ形式で行われた

 福井県の北東部に位置する勝山市は1000メートル級の山々に囲まれ、中心部は県内最大河川である九頭竜川の中流域に位置している。国内有数の恐竜化石の産地としての一面も持つ。同市農業委員会(松村勘兵衛会長)では、近い将来、農地と集落をどうやって守り、農業をどうしていくのかを集落で真剣に議論してもらうきっかけとし、各集落で座談会を実施している。

 勝山市では、高齢化や担い手不足により、中山間地域を中心に規模拡大、農地集積が課題になっている。
 そこで同委員会では、2019年2月~3月にかけて、30アール以上の農地所有者、法人や営農組織などの担い手を対象にアンケートを実施した。
 調査結果から改めて農業者の高齢化、後継者不足の実態が明らかになったことから、各集落で座談会を開いて今後の地域農業について検討することとした。
 同年8月から農業委員、農地利用最適化推進委員が主体となって各地区ごとの座談会を実施。実施にあたっては各集落の区長や農家組合長に協力を依頼している。現在も1集落または数集落単位での座談会を継続中だ。

 座談会では、市内全域で行った「農業経営に関する意識調査」の結果や「各地区の農業状況まとめ」から見えてくる農地や農業経営を取り巻く課題を農家にしっかり伝えて理解を求めた。その上で、農地と集落をどうやって守り、これから農業をどうしていくか議論している。
 将来の地域や農地のことは地域住民が主体となって決めていくことを前提としており、話し合いの調整役・アドバイス役として市、農業委員会、農業公社、JAなどが参加する。座談会後の取り組みについても支援している。農業委員会事務局では担い手育成や組織化の具体的な取り組みの情報提供もしていく予定だ。
 同市荒土地区では、農業委員2人と推進委員の2人を中心に今年1月19日から座談会を開始。全16集落のうちすでに15集落で実施した。座談会では意識調査の結果や現在の農地の状況などの説明をした後、数人のグループに分かれてワークショップ形式で意見を出し合っている。
 参加者からは「安全で高品質な農産物を生産するために農地だけでなく水路・道路・畦畔などを含めた総合的な環境対策に取り組んでほしい」「規模の拡大だけでなく、地域の特性を生かした儲(もう)かる農業への転換を図りたい」などの改善を求める声があがった。