改正基盤法の活用第1号が誕生 所有者不明農地の活用 鹿児島・喜界町農業委員会

昨年11月、改正農業経営基盤強化促進法が施行された。所有者不明農地の利用を促す制度の創設が最大の柱。共有者の過半が不明な農地でも、農業委員会による探索や公示などの手続きを踏めば、農地中間管理機構を通して最長20年の貸借が可能になった。動かしようがなかった農地に流動化の道を開く新制度に対し、現場の関心は高い。さっそく運用に乗り出した農業委員会も出てきている。

新制度を活用し、全国に先駆けて公示にこぎ着けたのが鹿児島県の喜界町農業委員会(久永照光会長、69)だ。今年1月、計11アール(2筆)の畑について6カ月間の公示を開始。他の共有者から異議がなければ農業委員会の総会で承認し、早ければ8〜9月にも利用権設定が実現する。
離島である同町では所有者不明農地問題が深刻化。町内農地の少なくとも3〜4割が相続未登記やその恐れのある状態にある。
公示第1号も相続未登記で、以前から事実上の管理者に当たる共有者が貸し付けを希望していた。登記名義人は町内に住んでいた管理者の叔母だが、2013年に死亡。叔母に配偶者や子はいなかったが兄弟や姉妹が多く、相続関係が複雑化していた。相続による共有者の過半が分からず貸すに貸せない状況だったが、新制度の開始で活路ができた。同委員会は町農業振興課からの情報でニーズを把握し、制度運用を決めた。
昨年末に町から共有者探索の要請を受け、手続きが開始。法務局から土地登記簿を取り寄せ、登記名義人の氏名と登記時の住所が町内だと確認した。さらに町に戸籍の附票や戸籍簿を請求し、配偶者や子もいないと確かめたことから、公示に至った。
同委員会の担当者は「今回は、登記名義人に配偶者も子もいない事例だったため、比較的スムーズに探索を終えることができた」と振り返る。
同委員会ではこれを皮切りに、新制度を精力的に運用している。第2号の公示も2月に開始した。町で国営かんがい排水事業を予定していることも背景にある。所有者不明で耕作者にも権利設定できていない宙に浮いた農地は、事業の同意徴集が滞る足かせとなるからだ。久永会長は「国営事業が控えているタイミングで新制度ができたのはありがたい。町内の農地利用にしっかり生かしていきたい」と話す。
国営事業の同意徴集は2020年度末に始まる。同委員会では同課と連携を強め、事業対象地域を中心に所有者不明農地の権利設定を急ぐ。担当者は「所有者不明農地を動かせる制度ができたということは、今まで動かせなかった農地を集積・集約化する責任が増したということでもある」と気を引き締める。
ただ、手続き上の苦労は少なくない。特に町外への転居者の戸籍などを請求する際、市町村により申請が通る要件に差があるなどの理由で時間がかかることが多いという。同委員会の担当者は「自治体間で円滑にやり取りできる仕組みが必要」と指摘する。