新たに3.1万ヘクタール集積 2018年度 機構の転貸実績1.6万ヘクタール

農水省は7日、2018年度の農地中間管理機構の実績を公表した。担い手への農地集積面積は機構による1万6千ヘクタールの転貸を含めて3万1千ヘクタールが新たに増え、担い手への集積率は56.2%となった。前年度から1ポイント増えたが、集積率の伸びは鈍化傾向にある。このままでは政府が掲げる“2023年度までに担い手のシェア8割”の目標達成は厳しい状況だ。今後は、平場以外の中山間地の農地や樹園地でいかに集積・集約化を推進していくかが課題となる。

2018年度の機構の借入面積は4万1千ヘクタール(前年度4万4千ヘクタール)で、機構が活動を開始してからの転貸面積は、累計で22万2千ヘクタールとなった。2018年度の1年間で新たに担い手に集積した3万1千ヘクタールのうち、機構による転貸は1万6千ヘクタールと全体の半数を上回ったが、前年度の1万7千ヘクタールに比べると減少した。
伸び率が鈍化した要因について、農水省は「平地などの農地を集積しやすい地域では話し合いが十分に行われており、取り組みが一巡したため」と説明する。てこ入れを図るため、関係機関が一体となり人・農地プランの実質化に取り組めるよう、今国会で機構法を改正した。市町村や農業委員会の役割が明確化され「農業委員や農地利用最適化推進委員には農業者の意向把握や、地域の話し合いへの積極的な参加に期待する」と話す。
今後の対応方針として「平地以外の集積が低調な地域でも、話し合いの体制から作っていく」とし、これまで機構の活用が進んでいなかった中山間地域などにも対策を講じていくことを強調した。

中山間地域でも関係機関と連携して、機構の活用を進めている農業委員会がある。
佐賀県伊万里市農業委員会(山口友三郎会長、70)では関係機関と連携して機構を活用した園地流動化に取り組んでいる。同市は県西部に位置し、梨やブドウなど果樹の栽培が盛ん。
一方で中山間地が大部分を占め、棚田も多く担い手への集積や規模拡大が進みにくいのが現状だ。高齢化により農家数が減少し、梨園などの樹園地で廃園する農家も増えている。そこで、2016年から県普及センターや農業委員会などで構成する伊万里・西松浦地区農業技術者連絡会果樹部会が中心となり「地域リレー方式」と名付けた園地流動化の推進を始めた。
地域リレー方式は、取り組みに賛同した園地所有者や耕作者に団体を設立してもらう。団体の話し合いにより、今後10年の間に誰がどの園を耕作するかを「地区農地流動化計画」にまとめる。計画に記載された園地は機構へ預けられ、機構は計画に基づいて耕作者へ配分する仕組みだ。この方式の利点について、山口会長は「計画を作成する際、耕作者には再来年以降の耕作の意思も確認する。来年は耕作できるが再来年は難しいという耕作者がいても、1年間の猶予期間がある。誰が引き受けるかを余裕を持って話し合うことが可能だ」と話す。

農業委員会の農地中間管理事業推進員は「各地区の座談会を回ってこの方式について説明しても、初めはなかなか良い反応が無かった」と振り返る。それでも関係機関で粘り強く説明を重ねた結果、大川町立川地区のリーダーが最初に取り組みに手を挙げた。2017年12月には「伊万里梨発祥立川の梨園を守る会」(田代直樹会長、59)を設立し、2018年1月に約18ヘクタールの樹園地を15人に集積した。この話が南波多町府招上地区に波及し同年11月に「府招上地区の樹園地を守る会」(前田丈男会長、68)が設立され、2019年1月に16ヘクタールの樹園地を15人に集積した。同地区には所有者に農業委員が含まれており、説明会の開催に向けた農家への声がけなどにも積極的に動いた。団体の設立や計画の作成もスムーズに行うことができたと言う。
同市の地域リレー方式による園地流動化の取り組みは、中山間地の集積を進めるうえで、一つのモデルになる。

写真=府招上地区での話し合い