農業も売れる物を作る時代へ  「おいしさ」の評価 手法に変革の兆し

 “作れば売れる”から“売れるものを作る”へと考え方の転換が進む中、農産物の「おいしさ」評価の手法に変革の兆しが出てきた。農産物の味や品質を明確に可視化できれば、消費者の選択の幅を広げるだけでなく、ニーズが高い農産物を作るための生産現場へのフィードバックにも応用できる。各分野で進む最前線の動きを探る。

新センサーでは農産物に当てるだけで手軽に測定できる(ハッピークオリティー提供)   


 静岡県袋井市で農産物卸や営農支援などを手がける(株)Happy Quality(ハッピークオリティー)は、農産物の糖や酸などの成分を非破壊で正確に測定する新センサーの開発に挑んでいる。これまで一般的だった糖度計よりも明確に成分や品質を見える化し、農産物の付加価値アップや消費者への情報提供、生産者の栽培技術向上に役立てる狙いだ。
 従来の近赤外線を使った糖度計には、糖と酸をはっきり区別できない課題がある。糖度計で分かる数値は、水に溶けている固形分の量を示す指標とされる。酸など他の成分によっても左右されるため、必ずしも「糖度が高い=甘い」とは言い切れない。
 宮地誠社長(45)は「糖度計で分かる糖度が実は純粋な甘さを表していないと知ったときは驚いた。でも、農業界や消費者にとってはその数字で選別するのが常識になっている」と話す。
 一石を投じるべく、産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)と手を組み、昨年度から新センサーの開発に着手。資金調達には静岡県の先端企業育成プロジェクト推進事業を活用した。来年度中の販売を目指し、グループ会社・サンファーム中山(株)のトマト農場で実証を重ねている。
 新センサーには「赤外分光光度計」の仕組みを採用した。糖や酸などの細かい波長を区別し、正確に成分量を測定できる。ただ、機器が大きく高額という欠点も。そこで、圃場に持ち込んで手軽に使えるよう、産総研の技術で赤外分光光度計を小型化した。
 測定作業は、本体に光ファイバー入りの専用ケーブルをつなぎ、先端部を農産物に当てるだけ。3秒ほどで測定でき、結果はパソコンなどに送られる。糖や酸以外も測れるため、例えばトマトならリコピンのような機能性成分の量を見える化し、商品PRにつなげることもできる。
 非破壊で計測できるのも特長だ。同じ実の成分がどう変化していくか分かるため、狙った味や品質の農産物を育てるためにはどんな栽培条件が最適か探り、生産技術を高める助けにもなる。
 「農産物の成分を見える化できれば、単に品質を担保するだけでなく、生産者の努力まで見える化することができる」と力強く語る宮地社長。これまでにない農産物の評価基準の確立に向け、さらなる改良を進める。