増える国産夏秋イチゴ ケーキ需要狙って

 イチゴの作付面積が減少する中、6~11月の端境期にケーキなどの需要をねらった夏秋イチゴの生産が増えている。かつてはほぼ輸入で、近年も米国産を中心に年間約3千トン輸入されているが、20年ほど前から国内生産が始まった。収量が少なく防除回数が多いなど課題もあるが、価格は冬春イチゴの2倍。夏秋栽培用の四季成り性の品種も相次いで開発されている。担い手として、各地で共通するのが新規就農者だ。

 菓子メーカーやケーキ店など約400社(店)と取引があるイチゴ専門商社のジャパンフレーズ(東京都新宿区)は夏秋季には米国産を輸入してきた。多いときには週に何便も貨物機をチャーターしたが、徐々に国産にシフト。5年前からは完全に切り替えた。
 国産に目を向けたのは、消費者の安全・安心への関心の高まりと輸入検疫の煩雑さ、品質面などからだ。露地栽培の米国産は糖度と一緒に酸度も上がるが、ハウス栽培の国産は糖度が上がっても酸度は抑えられ、より甘く感じる。米国は大果志向で、ケーキが小さい国内ニーズに合いにくい。輸送時に劣化しやすいという問題もある。
 国産は当初、長野県産を扱ったが、10年前に北海道のJAひだか東などによる夏秋イチゴ産地化プロジェクトへの協力を求められ「東京で売れるイチゴが欲しい」(石川ヒロ子社長)と参画。生産が軌道に乗った5年前から、全量を日高産(浦河町、様似町)に切り替えた。日高産「すずあかね」の生産量約200トンのうち150トンを同社が扱う。千歳空港から羽田空港に空輸。コストは米国産より3割ほど上がったが、扱いやすく取引先からも好評だという。

夏秋イチゴ部会長の細萱さん。ハウスは花卉用を転換した        

 夏秋イチゴは冷涼な東日本が中心だが、品種開発が進み、全国に産地が広がっている。中でも伸びが大きく、生産量が全国一と見られるのが長野県だ。栽培面積は2012年の14.3ヘクタールから、2018年には21.1ヘクタールに拡大している。
 長野県で注目される産地が、JAあづみ管内の安曇野市だ。2004年に2戸、35アールで始まった栽培は2018年産は48戸、6.5ヘクタールに拡大し、売り上げは3億7千万円。今年は6.8ヘクタールになった。
 きっかけは担い手の高齢化。JAがセルリなどにかわる軽量野菜を模索し、一部で栽培が始まっていた夏秋イチゴに着目した。昼夜の寒暖差が大きくイチゴ栽培に適していることと、需要があるのに生産が少ないことが決め手だった。
 大きく伸び始めたのは2012年から。出荷先を東京市場から輸入物中心だった関西市場に変え、大手製菓企業2社と契約すると販売価格が上がった。市によるハウスと高設栽培施設への助成も後押しした。現在、3分の2を企業向け、3分の1を市場に出荷。「すずあかね」が9割だが、市場の希望で「サマープリンセス」など4品種を栽培する。10アール当たり収量は全国平均を上回る3.5トンだが、生産者間でばらつきがあるため、勉強会や情報共有に力を入れている。 
 花卉から転換し、40アールで専作する部会長の細萱敦史さん(37)は、夏秋イチゴのメリットを「大きな機械が要らないなど投資が少なくて済み、他作物に比べて単収がいい」と話す。
 JAは2月に保冷施設を増設し、生産支援に力を入れる。当面、部会員60人、売り上げ5億円が目標だ。