人・農地プラン実質化への道(1) 人農地プラン本格始動 正念場迎える農委会

 農地中間管理事業法見直しの一丁目一番地、「人・農地プランの実質化」がいよいよ本格化する。地域の農地を守り継いできた世代が高齢化する中、将来を見据えた効率的な農地利用方針を地域自らが決めていくことは喫緊の課題だ。農地利用の最適化を使命とする農業委員会にとっても、ここが一つの正念場。市町村やJAなどの関係機関とも密に連携し、地域の現状把握と活発な話し合いをリードすることが求められている。

 人・農地プランはいわば地域農業の未来を描く設計図だ。農業者が地域農業の展望を話し合って中心的な経営体や農地利用の在り方などを明確にし、市町村が公表する。これまで1万5千超のプランが策定されてきたが、全てが地域の話し合いに基づくとは言いがたいのが実情だった。
 そこで、農地の受け手と出し手が特定されているかなど、現在策定されているプランの見極めを行い、改善が必要な地域ではこの夏に実質化に向けた工程表づくりが進められてきた。この秋から現場での取り組みが始まる。
 農地中間管理事業の推進に関する法律の改正により、農業委員会は市町村の行うプランづくりに協力することが法律に明記された。具体的には、農業委員と農地利用最適化推進委員は、農地所有者の意向把握を行うとともに、地域の話し合いへ参加を呼びかけたり、話し合いの場での話題提供や進行、意見の集約を行う。これまでも地域の農地のあっせんや利用調整を担ってきたことから、話し合いの調整役に最適任だとして期待は大きい。
 全国農業会議所の稲垣照哉事務局長は「話し合いのリードなどには得手不得手があるだろうが、役割分担しながら明るい話し合いの場作りから始めてほしい」と期待を寄せる。

大垣市静里地区の検討会。農地現況図を囲み、地域の課題を共有した                     

 プランの実質化には関係機関が手を結んで地域をけん引することが欠かせない。岐阜県大垣市農業委員会(岩井豊太郎会長)ではいち早くその体制を整え、プランを足がかりとした農地利用の最適化に向けて機運を醸成している。
 同市では2018年度、市内20地区ですでに策定されていたプランごとに検討会を立ち上げた。プランを継続的に見直す素地をつくり、地域農業の振興と維持につなげる狙いだ。検討会の規約には年1回以上の開催を明記している。
 検討会のメンバーは農業委員や推進委員、農事改良組合長、担い手など農業者が主体。ほぼ全ての地区で農業委員や推進委員が会長、副会長に就き、リーダーシップを発揮している。事務局をJAの支店に置き、同委員会や市農林課、JAが参加し、一丸で支える。
 肝心なのはプラン見直しが検討会の目的ではないということだ。同委員会事務局の増田裕次長は「地域の状況は絶えず動き、見直しに終わりはない。プランは地元の実情や課題に目を向けるきっかけ。よりよい地域を目指してみんなで考え、具体化する体制を持続していかなければ」と話す。
 もともと同市では5~6年前に農林課が主導し、各地区でプランを策定していた。しかし毎年見直す地区もあれば手つかずの地区もあるなど温度差があり、プランそのものの認知度も低かった。
 契機は2017年8月。県農業会議が進める「新・ぎふ農業委員会活性化大作戦」の目標の一つに、プランを年1回以上見直すことが掲げられた。同委員会はこれを受けてプランを軸とした活動の強化を決め、農林課やJAも巻き込んで検討会の設置に至った。
 昨年度は各地区の改良組合に所属する耕作者や農地所有者を対象にアンケートを採り、農業経営や農地利用の意向、地域農業の課題を尋ねた。これを材料に各検討会で協議し、全てのプランを更新。市全体で足並みをそろえ、より地域の実情に合ったプランを練るために再スタートを切った。
 検討会の活動は動き出したばかり。今月には実質化に向けた工程表が公表された。いよいよ検討会の真価が試される時だ。今後は各地区での話し合いの単位を集落ごとに細分化し、さらに地域に入り込んだ議論を目指す。
 県農業会議会長も務める岩井会長は「農村部でも少子高齢化は避けられない。プラン実質化をさらに進めて各農家の今後の耕作意向などを地図上にまとめ、地区ごとに将来展望を話し合っていきたい」と気を引き締める。