列島最前線 「食育」と「読育」組み合わせ たべるえほん 佐賀・太良町 安東浩太郎さん、美由紀さん

農業や命の大切さを学ぶ「食育」と、本の読み聞かせで心を育む「読育」を組み合わせた取り組みに挑戦するアスパラガス農家の夫婦がいる。絵本を製作し、そこに出てくる食材をセットで販売するという試みだ。食材に興味を持つことで、よりおいしく感じてほしいという思いがある。

安東浩太郎さん(40)と美由紀さん(38)の夫婦は10年前に大阪から佐賀県太良町へ移住した。6年前に荒れたミカン畑を借り受けてビニールハウスを設置。2人の子供を育てながら、アスパラガスを生産する。昨年12月にはA-noker(ええのうかー)株式会社として法人化した。
町の特産物である竹崎カニや竹崎カキの殻などを肥料に用いた栽培方法を研究し、2年前には「森のアスパラ」として商標登録をしている。
安東さん夫婦は、昨年5月〜6月にクラウドファンディングで「『たべるえほん』プロジェクト」を立ち上げて、絵本の製作資金を募った。きっかけは、ある日の早朝に美由紀さんがアスパラガスを収穫したことだった。
「ハウスのアスパラガスがまるで竹林のように幻想的に見えた」と言う。浩太郎さんに話したところ「竹取物語」になぞらえた絵本を作ったら面白いのではないかということになった。「何でも残さず食べなさいという話ではなく、自然に食材へ興味を持ってもらえる絵本がいいなと思った」と美由紀さんは振り返る。

プロジェクトには全国から賛同の声が寄せられ、151人から約110万円の支援金が集まった。昨年9月にはアスパラガスを題材にした絵本「つきのおくりもの」を刊行。同社のHPでアスパラガスと絵本のセットを販売している。絵本のみの購入も可能だ。
安東さん夫婦はこれまでも、地元の小中学校の就農体験や高校の職業体験、障がい者の就労訓練なども引き受けている。就農を希望する研修生を積極的に受け入れ、後進の育成にも力を入れている。
浩太郎さんは「絵本の製作を通じて地域のさまざまな業種の人とつながりができたことも大きい」と話す。また「佐賀県には他にもおいしい食べ物がたくさんある。これらを題材にして絵本をシリーズ化したい」と今後の展望を語る。

写真=わが子に読み聞かせをする浩太郎さん